広島大学 工学部 第三類
これからは、地球主義、人間主義に基づく新しい科学技術の発展がますます不可避になります。すなわち、自然と調和し、より高度な機能をもつ物質・材料の開発が社会的に要請されています。化学は日本が世界をリードしてきた分野で、これまでの知識・技術の蓄積をさらに発展させ、世界に新たな化学を提示することが重要と思われます。さて、理学では基本原理を明らかにすることに重点が置かれていますが、これを実際に使える形にし、さらに利便性に優れたものへと開発し社会へ還元するのが工学の使命です。そこで、第三類では「化学」をベースに、新規物質や材料を発見、理解、活用、製造することで私たちの生活を豊かにすることを目的に教育と研究を行っています。この目的を達成するため、新規機能性物質の開発に資する「応用化学」、微生物・動植物を用いて有用物質を生み出すバイオテクノロジーによる「生物工学」、これらの物質の製造および関連する技術などを最適に制御する「化学工学」の3つのプログラムから構成されています。これまでにない物質の開発やモノづくり等、世界最先端の研究を通して人類の未来に貢献できる人材育成を目標としています。
応用化学プログラム
我々の生活において利用しているモノが何からできていてどんな構造をしているのか、どんな性質を持っているのか、さらにはどのように変化するのかを明らかにするのが「化学」であり、「応用化学」は我々の生活を豊かにするために、役に立つモノをいかに生み出していくかということを追求する学問です。近年ますます困難さを増している環境問題の解決のためにも、化学による新たな技術の開発は欠かせません。当プログラムでは「環境にやさしい化学」を理念に掲げ、高度な機能を発現するだけでなく、人類が持続的に発展することに資するアプローチで新しい材料を生み出すべく教育と研究にチャレンジしています。
生物工学プログラム
生物工学プログラムは、醸造微生物を中心とした微生物機能の産業応用教育・研究を目的として1923年に発足した広島高等工業学校醸造学科をルーツとします。これまでに、微生物のみならず、動植物の機能を活用した人の健康と医療に役立つモノづくりや環境浄化に関わる研究など、バイオテクノロジーやバイオ生産技術を駆使しながら、世界トップレベルの成果をあげてきました。人類の福祉と生存に貢献する生命分子機能の解明と活用に関する先端的研究を通して、バイオサイエンスとバイオテクノロジーの一躍を担う、グローバル規模での様々な社会的要請に対して柔軟に対応できる人材の育成を目指しています。
化学工学プログラム
化学工学とは“化学を工学する”ことであり、化学が関係するあらゆることを社会に役立てるために必要不可欠な学問です。例えば、化学製品を製造し社会に貢献するためには、その製品に使われる物質自体を合成するのはもちろんのこと、省エネルギー的に、二酸化炭素をできるだけ排出せず、副生物も少なく、そして安全に製造することがとても重要です。化学反応および物質分離の学問として創始された化学工学は、化学物質や化学製品を製造するプロセスのみならず、生態系や地球環境をもプロセスと捉え、効率化と最適化を実現してゆきます。化学を社会に役立てることができる化学工学と化学工学を学んだ人材は、あらゆる産業分野で必要とされています。
カリキュラム
入学者選抜は第三類で一括して行います。2年次前期終了までは共通で、化学、生物化学、化学工学のみならず数学、物理など基盤領域を幅広く習得するカリキュラムとなっています。2年次後期開始時に3つのプログラムに分かれ、それぞれの専門教育を受けます。なお、各プログラムへの配属は、本人の希望とそれまでの成績に基づいて決定されます。それぞれのプログラムでは、新しい機能性物質や材料の開発、動植物・微生物のバイオテクノロジー、環境、資源、エネルギーを意識した製造技術などを含む、いわば人類の未来を切り拓く分野を深く学んでもらいます。以上のように、幅広い基礎知識を養い、高度な専門技術を調和良く身につけた人材を育成することを教育目的としています。